きっかけを与える
最近、1年生部員に技術練習を直接指導することがある。その際に思うのは、「万能な指導方法はない」ということである。別の言い方をすると、みんなが必ずすぐに100mのタイムが0.5秒速くなる練習方法なんてありえないということである。
もちろん、みんなにとってより効果的な練習方法を私も日々考えているのだが、全員がすぐに一定の割合で向上させられる練習方法はそう簡単に生み出せるものではない。そんな方法が生み出せれば、一大発見になる。
私は、速く走るための答えはそう多くないと考えている。走りにおいて、走る本人が相手にするのは、主に地面反力と重力である。この2つは基本的に変化しないものであるため、速く走るためにやるべきこと、つまり答えは自ずと限られてくるのである。ただ、その答えにたどり着く方法・きっかけは非常に多いとも考えている。
ある走りにおける重要な動き「X」を身体で理解させるために、「α(アルファ)」「β(ベータ)」「δ(デルタ)」3つの練習方法を選手たちにさせるとする。するとA選手は「α」で「X」をより理解できた。しかしB選手は「β」で「X」をより理解できた。またD選手は「δ」で「X」をより理解できた。人によってものの感じ方が違うわけであり、こういうことはよくある。
こういうこともある。ある日、A選手は「α」で「X」をより理解できたとする。ところが数日後、A選手は「β」で「X」をより理解できた。そのまた数日後、A選手は「δ」で「X」をより理解できた。日によってその人の感じ方も変わったりすることがあるのだ。
スポーツを指導する上で大事なことの1つとして、「きっかけを多く与えること」があると考えている。「α」だけでなく「β」「δ」も教えて、「X」へと導く道を増やすことが重要なのだ。
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